Reading Circle vol.10 レポート
世界史や女性史の中におけるベリーダンスの歩みを描いた本「Grandmother’s Secrets」。皆で翻訳を分担して読み進めるReading Circleの第10回が、10月23日にルハニのスタジオで行われました。
今回はおそらくこれまでの中で最も難しいパートでした。テーマは「Industrial Times」。18世紀の産業革命の時代に、女性達のダンスがどのような影響を受けたのか、というものです。そのなかで最も重要なキーワードが、「時間の感覚」でした。
ヨーロッパを中心に資本主義と科学技術が目覚ましい発展を遂げたこの時代、人々は豊かさを求めて田園地帯から大都市に流入し、中産階級の労働者となっていきます。それまで四季の変化で緩やかに捉えられていた時間は、秩序を保ち生産性を高める為に新たに定められた、万国共通の時間に置き換えられました。かつて貴族階級の嗜好品だった時計が技術革新により庶民に普及したことから、時間の感覚はますます“正確かつ均一” なものとなり、人々はまるで工業製品のように、同じ時間を刻む「ねじ」のようになっていきます。
時間の感覚の変容に始まった価値観の変化は、社会に様々な影響を及ぼし始めます。ヨーロッパから遠く離れた地域の自然と人々は「征服し啓蒙し、有効利用すべきもの」とされ、植民地主義に正当性を与えました。こうした中、自然を賛美する女性のダンスもまた「男性的な社会規範から逸脱したもの」と見なされていきます。
しかし20世紀に入ると、人間性を抑圧する資本主義社会に疲れた人々の間で、古き良き時代への憧憬が生まれ、揺り戻しが起こります。この変化の胎動は、ダンスにも影響を及ぼしていきました。
交通手段の発達により人々の往来や移民が増えると、東西文化の融合が進み、欧米で「オリエンタリズム(東洋趣味)」が生まれます。イサドラ・ダンカンを始めとする欧米のダンサー達が、中東の女性達のダンスにインスパイアされ、自由な発想で女性らしさを謳歌する新しいダンスを世に広めたことから、次第に「女性性」を解放するダンスが市民権を得るようになります。
さらに二つの世界大戦中に、トルコやアルメニア、エジプトやシリアなどから多くのミュージシャンやダンサーが戦火を逃れてアメリカに移住。オリエンタルジャズやエスノキャバレーといった新たなジャンルを生み出します。自由と人間性に価値を置くムーブメントはやがて1960年以降のフェミニズムに繋がり、今日の私達に受け継がれていったのです。
第二章の歴史パートのクライマックスに辿り着いて感じたのは、紀元前数千年前の女神神話から今日に至るまで、女性のダンスの歴史は、決して平坦なものではなかったということ。でも抑圧されればされるほど、逞しく蘇って来た歴史でもありました。
この読書会では、自分の担当のパラグラフを翻訳した後に、一人一人感想を参加者みんなでシェアします。自分の中の女性性を知らない間に抑え込んでいたことに気付いたり、話すことで過去のトラウマから解放されたり、同じ感覚を持っていたのは自分1人ではないということを知ったり。そして、ベリーダンスを通じで自分の中に変化が生まれていることなどを語り合います。この日もいろいろな体験や発見が語られ、とても親密な時間を過ごすことが出来ました。
次回の第11回は11/20(日)13時から、第二部の歴史パートのまとめを読んでいきます。続く第三章は、身体のパーツごとの動きと、それに込められた深い意味を学んでいきます。英語が苦手でも心配いりませんので、ぜひ学び多く豊かなこの時間を一緒にお過ごし下さい!
世界史や女性史の中におけるベリーダンスの歩みを描いた本「Grandmother’s Secrets」。皆で翻訳を分担して読み進めるReading Circleの第10回が、10月23日にルハニのスタジオで行われました。
今回はおそらくこれまでの中で最も難しいパートでした。テーマは「Industrial Times」。18世紀の産業革命の時代に、女性達のダンスがどのような影響を受けたのか、というものです。そのなかで最も重要なキーワードが、「時間の感覚」でした。
ヨーロッパを中心に資本主義と科学技術が目覚ましい発展を遂げたこの時代、人々は豊かさを求めて田園地帯から大都市に流入し、中産階級の労働者となっていきます。それまで四季の変化で緩やかに捉えられていた時間は、秩序を保ち生産性を高める為に新たに定められた、万国共通の時間に置き換えられました。かつて貴族階級の嗜好品だった時計が技術革新により庶民に普及したことから、時間の感覚はますます“正確かつ均一” なものとなり、人々はまるで工業製品のように、同じ時間を刻む「ねじ」のようになっていきます。
時間の感覚の変容に始まった価値観の変化は、社会に様々な影響を及ぼし始めます。ヨーロッパから遠く離れた地域の自然と人々は「征服し啓蒙し、有効利用すべきもの」とされ、植民地主義に正当性を与えました。こうした中、自然を賛美する女性のダンスもまた「男性的な社会規範から逸脱したもの」と見なされていきます。
しかし20世紀に入ると、人間性を抑圧する資本主義社会に疲れた人々の間で、古き良き時代への憧憬が生まれ、揺り戻しが起こります。この変化の胎動は、ダンスにも影響を及ぼしていきました。
交通手段の発達により人々の往来や移民が増えると、東西文化の融合が進み、欧米で「オリエンタリズム(東洋趣味)」が生まれます。イサドラ・ダンカンを始めとする欧米のダンサー達が、中東の女性達のダンスにインスパイアされ、自由な発想で女性らしさを謳歌する新しいダンスを世に広めたことから、次第に「女性性」を解放するダンスが市民権を得るようになります。
さらに二つの世界大戦中に、トルコやアルメニア、エジプトやシリアなどから多くのミュージシャンやダンサーが戦火を逃れてアメリカに移住。オリエンタルジャズやエスノキャバレーといった新たなジャンルを生み出します。自由と人間性に価値を置くムーブメントはやがて1960年以降のフェミニズムに繋がり、今日の私達に受け継がれていったのです。
第二章の歴史パートのクライマックスに辿り着いて感じたのは、紀元前数千年前の女神神話から今日に至るまで、女性のダンスの歴史は、決して平坦なものではなかったということ。でも抑圧されればされるほど、逞しく蘇って来た歴史でもありました。
この読書会では、自分の担当のパラグラフを翻訳した後に、一人一人感想を参加者みんなでシェアします。自分の中の女性性を知らない間に抑え込んでいたことに気付いたり、話すことで過去のトラウマから解放されたり、同じ感覚を持っていたのは自分1人ではないということを知ったり。そして、ベリーダンスを通じで自分の中に変化が生まれていることなどを語り合います。この日もいろいろな体験や発見が語られ、とても親密な時間を過ごすことが出来ました。
次回の第11回は11/20(日)13時から、第二部の歴史パートのまとめを読んでいきます。続く第三章は、身体のパーツごとの動きと、それに込められた深い意味を学んでいきます。英語が苦手でも心配いりませんので、ぜひ学び多く豊かなこの時間を一緒にお過ごし下さい!
Reading-Circle-vol.10-2016.10.23-後記 Zelal
更新日:2016.10.25 Tuesday