エキゾ盆踊り「珠洲ちょんがり節」考-盆踊りとヒップホップの意外な関係
「珠洲エキゾ盆」でコラボした能登半島伝統の盆踊り「珠洲ちょんがり節」について紹介します。
「珠洲ちょんがり節」とは、
古くは江戸後期の大阪を発祥とする大道芸「ちょんがれ」を起源に、能登や富山で独自に発展し、盆踊りと融合したものです。
「ちょんがる」とは日常的な歌詞をラップのようなテンポで歌うことで、実際珠洲のちょんがり節には仲間内でdisりあうようなユーモラスな歌詞もあります。
「ないないづくし」
向いの奥様だらしがない
ご主人起きてもまだ起きない
だて巻き姿でしどけない
食べ物づくりは上手じゃない
入り銭出銭を考えない
終始つんけん愛嬌がない
姑の小言を聞き入れない
言葉をかけても返事がない
借りもの長く返さない
着物の襟垢気が付かない
短気で女中が居つかない
これじゃ世帯が持ちきれない
2番の歌詞ではアンサーソングのように今度は夫がdisられるという形で進んでいきます。
こういった楽曲の多くは即興で演じられていたそうです。
富山県ではちょんがれ節の巧さを競う大会(いまでいうとラップバトルでしょうか?)もしばしば開催され、その当時の歌詞も多数発見されているようです。
アフリカのある部族社会において、いさかいが起こった時、いさかいの当事者は宴を催し、村人に食事をふるまい、楽隊を雇って歌で自分の主張や相手の悪口を言うという習慣があるそうです。
その次の晩には、もう一方の当事者も同じように宴を催し、やはり歌で相手に反論します。
そうやって宴を重ねるうちにお互いがヒートアップしていき、祭りの輪が広がり、最後には一つの祭りになって、水に流すという風習があるそうです。
いさかいを起こすと、双方がさんざん散財させられて、笑いものにされてしまう。
しかし、そのことによっていさかいは丸く収まり、コミュニティーがさらに強固に結びついていく。
先人の知恵を感じさせられます。
ヒップホップにも同じような様式がありますし、珠洲や富山といったところでもこういう日常が繰り返されて来たのかもしれません。
実際にいさかいなのか、それを模したじゃれ合いなのかはともかく、
アフリカの部族社会の祭りとヒップホップ、そして「ちょんがり」、時代も場所も全く異なる3つの文化に時間や空間を越えた不思議な普遍性をみることができます。
ジプシー、スーフィー、トライバル、オリエンタル、ターキッシュ、フォークロア、アンビエント、スピリチュアル
Ruhani Bellydance Artsでいつも踊っているさまざまなダンスは、もっとたくさんのダンスや文化と根幹でつながっていて、輪踊りの中に放り込めば自然に一つに溶け合ってしまいます。
「私たち日本人にとって最も身近な盆踊りをベースにすることで、そういった普遍性をもっと多くの人たちに体感してもらえるのではないか?」とNourahさんは言います。
これが「エキゾ盆踊り」の出発点なのかもしれません。
人が集い、歌い、踊る。こういった普遍的な営みの繰り返しが伝統を形づくっています。
現代を生きる私たちが、同じように集い、歌い、踊ることによって、伝統は変化を積み重ね、生きた伝統として続いていくのだと思います。
今年の夏の「エキゾ盆」をどうぞお楽しみに。
Suzuki
更新日:2019.08.13 Tuesday