Reading Circle “Salome -The Dance of Seven Veils-“-読書会-vol.07 2/3(sun) レポート
2月3日の立春の日。柔らかな日差しの注ぎ込むスタジオで、「サロメとセブンベール」を読み解く7回目のリーディング・サークルが開かれました。
今回のテーマは「ポルノとエロティシズムの違い」。ベリーダンスを踊っていると言うと、「ああ、あの露出の多いセクシーな踊りね」と、微妙な含みのある反応を受けた経験は、誰しもあるのではないでしょうか?女性の美や生命力を象徴する豊かなお腹によって、女性が自らの内面を語るこのダンスは、長い歴史を持っているのにも関わらず、しばしば誤解されがちです。
では、どのようなことを意識すれば、私達はこのダンスの奥深さや踊る喜びを伝えられるのでしょうか?著者はこの章で、「官能とは何か」を見事に描いたいくつかのダンス作品や映画を引き合いにしながら、この困難な課題を解く手掛かりを与えてくれます。
その一つは、ベル・エポックの時代に一世を風靡した、鬼才ディアギレフ、ダンサー・ニジンスキー、作曲・ドビュッシーによるバレエ作品「牧神の午後」のベールのシーン。バレエという形式に真っ向から挑んだ”美しき問題作”で、もセンセーショナルを巻き起こしたラストシーンをYouTubeでも見ることが出来ます。
さらに、ベリーダンスそのものを映画のクライマックスに用いて大成功を収めた、A・ケシシュ監督によるネオリアリストの映画「クスクス粒の秘密」(2014)についても、深い考察が加えられています。
南仏で暮らすチュニジア系移民の家族の日常を描いたこの映画。中東にルーツを持つ主演女優のアフシア・エルジはプロのベリーダンサーではありませんが、ベリーダンスというダンスの本質を見事に表現し、映画を成功に導きました。著者マリア・ストロヴァの言葉です。
「…そのダンスで重要なものはテクニックでもステップでも振り付けでもなく、エロティシズムです。エルジはほんの少しステップを踏んだだけで、最も矛盾した感情を表現しました。
…もし私がそのダンスだけに注目するのであれば、素人的で繰り返しが多く、振り付けとしては洗練されていないと思ったでしょう。しかし、物語の文脈の中ではこのダンスでよいのです。私を魅了したのは、体の動きで自分の物語を語ろうとするダンサーの力強さです。彼女はカメラをまっすぐ見据え、観客を見据え、弁解せず、術策なく自身を表に出し、自分の体をカタルシスの道具として、自身の内なる人生を映し出す鏡として、生かす方法を知っているのです」。
その上で、エロティシズムをこう定義します。
「…女性のエロティシズムとは、”意識の旅”です。…時に、自分を黙らせているのは、私達自身です。私達が何者か、どう感じているのか、私達がどれだけのことを成し遂げられるのかを外に向けて表現することすら出来ずに。私達は往々にして、他者がこう踊ってほしいという期待に沿うように踊ってしまいがちです。
…真のエロティシズムが存在するのは、男女間で一方的にではなく、互いに歓びを分かち合っている時です。女性が自らを語らず単に欲望の視線の対象になるポルノには、男女の関係を豊かにする物語や情感を見つけることはできません」。
1960年代以降、アメリカのポップカルチャーや性の解放の気運の中で、ポルノもまた文化の一つとして開花していきます。女性のヌード写真を、著名文化人や政治家のインタビューなどとともに掲載したアメリカの男性誌「PLAYBOY」のように、性のタブーを破り社会に革新をもたらしたケースもあります。しかし一方で、エロティシズムとポルノとの境界が見えづらくなり、今日の混乱を生んでいるとも言えるでしょう。
「私達はダンスを通じて、自分自身を語っているのか?」——その一点を見失うことなく、自分の中のエロティシズムを芸術に昇華していきたい。そう感じさせる学びの多い章でした。
次回の読書会は3/31(日)12:00より、ルハニのスタジオで開催します。ベリーダンスと自分自身の人生に向き合う貴重なひとときを、ぜひご一緒しましょう!
Reading Circle 読書会 vol.08
“Salome -The Dance of Seven Veils-“
後記 Zelal
更新日:2019.03.28 Thursday