Reading Circle “Salome -The Dance of Seven Veils-” vol.3 report -読書会レポート-9/2(sun)
9/2(日)にリーディングサークル「Salome -The Myth, the Dance of the Seven Veils」
第三回を開催しました。
Reading Circle “Salome -The Myth, the Dance of the Seven Veils” Vol.3
イタリア在住のベリーダンサー、Maria Strovaの著作「Salome-The Myth, the Dance of the Seven Veils-」を読み解き、新約聖書にも描かれたサロメという少女が、その後の女性やダンスの歴史に与えた影響を語り合う読書会。第三回は9月2日の昼下がりに行われました。
19世紀末、デカダンスの寵児と呼ばれた作家、オスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」。その主人公であるサロメは1世紀頃の古代パレスチナに実在した女性で、キリスト教世界ではとてもよく知られています。ワイルドはサロメに、シュメール神話などに登場する女神イシュタルの冥界下りの物語を重ね合わせて戯曲を書いたとされています。それが「7つのベールの踊り」の起源です。
義父であるヘロデ・アンティパス王の好色な視線に晒され、求められるままに美しいベールダンスを踊った王女サロメが、その見返りにイエスらに洗礼を授けたとされる「洗礼者ヨハネ」の首を求める・・・。ワイルドが描いた背徳の美は、西洋を中心にセンセーションを巻き起こし、その後多くの芸術家がサロメを題材に作品を作り続けてきました。
しかし、「サロメ=魔性の女」というステレオタイプな描写に、嫌悪を覚える人たちも少なくはありませんでした。私達が読んでいる本の著者、Strovaもまた、当初はサロメのことが好きではなかったといいます。ところが調べていくうちに変化が生まれたといいます。
「サロメについて深く知るようになる過程で、驚いたことが一つあります。それは、私が彼女をジャッジしなくなったということです。エロティシズムについて、そして今日氾濫している”暴力”について、サロメは多くのことを語れるということに気づいたのです。
ヘロデ王の宮廷で彼女がどれほど孤独だったのかを知ったとき(中略)、私は初めて彼女の物語を真に理解し始めました。そして、彼女を正当に解釈するのには何が必要かを悟ったのです」。
そして、このように続けます。
「サロメを踊ることは、セブンベールダンスを表現するという挑戦に直面することです。それは、単に『ベールを脱ぐ身体』ということではなく、ずっと意味のあるダンスです。(中略)サロメの神話は、女性の地位を明らかにする社会的な物差しです。(中略)女性の身体やセクシュアリティを操ろうとする行為に抗うための表現手段として。サロメの神話は私達の芸術を発展させるために必要な、普遍的な神話です。なぜなら、ベリーダンスとベールダンスが由緒ある西洋の劇場で演じられ、認知を得たのは、このサロメという人格があったからなのです」。
誰かの「視線」に晒され、萎縮して、本来の自分を押し殺してしまう・・・。そんな経験は誰しもあることでしょう。でも、視線に晒されながらも意思表示できるのだということを、サロメは多くの芸術家を通じて、示してきたのではないでしょうか?そして、その「視線」を送る者が本当にその対象を理解できているのかどうか、つまり網膜には映っていても、表層に囚われ真の姿を捉えてはいないのではないかということを、サロメは観る者に問題提起しているのではないでしょうか?
・・・Strovaはサロメを通じて「観る者」のあり方を逆照射してみせ、ひいては自分を押し殺してしまいがちな私達に、新たな視点と表現する勇気とを与えてくれます。
あまりに多くの芸術作品の題材となったサロメ。でも、かくも美しく奥深いサロメ像の解釈は、女性であり、ベリーダンサーであり、ベール使いの名手であるStrovaならではの真骨頂といえるでしょう。
先日偶然にも、来日していたTamalyn Dallalにセブンベールを学ぶという幸運に恵まれたので、私達がこの本を使いセブンベールを学んでいることを伝えてみました。すると、It’s a destiny!と喜んでくださり、とても優れた本だとコメントしながら、「セブンベールは人生をかけて学んでいくもの。それぞれのセブンベールを探していくのよ」と仰いました。
女性が自分自身を見つけ、女性として生きる喜びを正当に享受するために、セブンベールダンスは多くの発見をもたらしてくれるに違いありません。ワイルドの戯曲「サロメ」のト書きにある「サロメは7つのベールの踊りを踊る(Salome dances the dance of the seven veils.)」のシンプルな一行から、どれほどの芳醇なインスピレーションがもたらされるのか、とても楽しみです。
次回の読書会は10月14日(日)13時から、ルハニのスタジオで行われます。本のプリントをご用意しますので、単発でもお気軽にご参加下さい。珠玉の言葉の数々を分かち合い、語り合う豊かな時間を、ぜひご一緒いたしましょう。
後記 Zelal
Reading Circle “Salome -The Dance of Seven Veils-“-読書会-vol.04 10/14(sun)
更新日:2018.10.14 Sunday